空き家バンクと自治体の相談窓口の使い方|登録の流れ・成約までの現実・窓口で聞くこと
公開: 2026年9月1日 最終更新: 2026年9月24日
相続した実家をどうするか考え始めると、「空き家バンク」という言葉と、市区町村の相談窓口に行くという選択肢が出てきます。どちらも自治体が関わる仕組みですが、自治体が何をしてくれて、何はしてくれないのかが分かりにくいまま、登録だけして待ってしまう例も少なくありません。仕組みの輪郭から整理します。
- 空き家バンクは、自治体が空き家の情報を集めて公開する「情報提供の仕組み」です。売買・賃貸の交渉や契約は、当事者どうしか、自治体が定めた協力事業者(宅地建物取引業者など)が行います。
- 登録しても成約するとは限りません。登録件数と成約件数は別の数字で、価格を決めるのも自治体ではありません。
- 相談窓口は「担当課を探して、制度の有無を聞く」ために使います。自治体によっては、空き家の管理事業者を登録・紹介する制度や、空家等管理活用支援法人の指定があります。
空き家バンクは「自治体が運営する情報提供の仕組み」
空き家バンクは、市区町村(または都道府県)が、売りたい・貸したい空き家の情報を所有者から募り、利用を希望する人に向けて公開する仕組みです。多くは移住・定住の促進や、空き家が使われないまま増えていくのを抑える目的で運営されています。
重要なのは、自治体は情報を載せる場をつくっているのであって、不動産の仲介をしているわけではないという点です。たとえば横手市の空き家バンクでは、掲載されている各物件に「担当不動産会社」が付き、取引はその事業者が担当します。市は情報提供に留まる形です(2026年9月21日に同市の公式ページで確認。掲載は5件、成約実績は令和6年2件・令和7年3件と記載)。
国土交通省は、自治体ごとにばらばらだった空き家バンクの情報を横断して検索できるようにするため、「全国版空き家・空き地バンク」を整備しています。国が公募で選定した民間事業者2社がそれぞれ運営し、平成30年4月から本格運用が始まりました。参画する自治体から提供された情報を標準化・集約することで、全国どこからでも検索できるようにするという位置づけです。つまり、全国版は各自治体のバンクを置き換えるものではなく、自治体のバンクが先にあって、そこに載った情報が集約されるという順序になります。
名称も運営の形もさまざまです。市川市は「空家活用マッチングサービス」という独自の名称、尾道市は地区ごとに2つのバンクがありNPO法人・一般社団法人が運営に関わっています。札幌市のように市独自のバンクを持たず、北海道のバンクへ案内している自治体もあります。「空き家バンク」で検索して見つからなくても、同じ機能が別の名前で存在することがあります。
登録の流れと、向く物件・向かない物件
手続きの細部は自治体ごとに違いますが、おおまかな流れは共通しています。
- 担当課に相談する。物件の所在地の市区町村に、バンクの有無と要件を確認します。
- 登録申込みを出す。所有者であることが分かる書類(登記事項証明書など)と物件の情報(所在地・面積・築年・現況)を添えるのが一般的です。共有名義なら共有者全員の同意を求められることがあります。
- 現地の確認・写真の準備。自治体の職員や協力事業者が状態を見たうえで、掲載内容を整えます。
- 掲載。価格や賃料を含む物件情報が公開されます。
- 問い合わせ・交渉・契約。当事者どうし、または協力事業者を介して交渉します。
前提として、名義の確認が欠かせません。相続した家では、相続登記が済んでいないと登録できない、あるいは契約の段階で止まる可能性があります。相続登記は2024年4月1日から義務化されています(実家を相続したら最初にやること)。
向いているのは、そのまま、あるいは軽い手直しで使える状態の家、多少手を入れてでも住みたい人がいそうな立地、急いで現金化する必要がない場合です。一般の流通に乗りにくい地域の物件が、移住希望者の目に触れる機会をつくれる点がバンクの利点です。
一方、次のような場合は、バンクだけに頼るのは向きません。
- 倒壊のおそれがあるなど、そのままでは人が入れない建物。自治体によっては登録の要件で除かれ、解体や更地としての活用が先の検討になります(空き家の解体費用と補助金の探し方)。
- 期限を切って売りたい、金額を優先したい場合。バンクは掲載の期限を区切る仕組みではありません。
- 共有者の意見がまとまっていない場合。登録そのものが進みません。
成約までの現実——登録件数と成約件数は別の数字
「空き家バンクに載せれば売れる」という見方は、実際の数字と合いません。掲載は買い手・借り手に情報が届く経路が一つ増えることを意味するだけで、成約を約束するものではないからです。
当サイトが2026年9月に10自治体の公式サイトを調べた範囲でも、状況はかなり違いました。横手市は掲載5件に対し、成約実績は令和6年に2件、令和7年に3件。大崎町は令和8年4月1日時点で戸建ての売買30件・賃貸13件、土地の売買41件などの内訳を公開しています。一方、浜松市の空き家バンクは、調査時点のページに「登録されている物件はありません」と表示されていました。同じ「空き家バンク」でも、母数も動きも自治体によって大きく異なります。
もう一つ押さえておきたいのが、価格を決めるのは自治体ではないということです。多くの自治体は、掲載内容が正確であることや、交渉・契約の結果について責任を負わない旨を明示しています。横手市の例のように取引を担当する不動産会社が決まっている場合でも、価格の設定や条件の調整は所有者と相手方の間の話です。相場観を持たずに登録すると、問い合わせが来ないまま時間だけが過ぎることになりかねません。
そもそも登録件数を集計・公表していない自治体も珍しくなく、10自治体のうち公開情報から件数まで確認できたのは3自治体だけでした。判断の材料にするなら、件数より成約実績が公開されているかを見たほうが実態に近づきます。
バンクへの登録は、売る・貸す・壊す・持ち続けるという選択肢のうち、「売る」「貸す」を進めるための手段の一つです。前提となる整理は実家を「売る・貸す・壊す・持ち続ける」の判断の整理にまとめています。
自治体の相談窓口の使い方
担当課の見つけ方
空き家の担当課の名前は、自治体によってまちまちです。実際に調べた範囲でも、札幌市は都市局建築指導部建築安全推進課、横手市は市民生活部生活環境課くらしの相談係、市川市は街づくり部空家対策課、京都市は都市計画局住宅室住宅政策課、大崎町は企画調整課企画政策係でした。建築・住宅の部署に置く自治体と、生活環境や企画・移住の部署に置く自治体があり、名称から推測するのは難しいのが実情です。
現実的な探し方は次の3つです。
- 自治体の公式サイトで「空き家」「空家」の両方で検索する(漢字表記のページも多いため)。
- 空き家等対策計画のPDFを開き、末尾の問い合わせ先や関係課の一覧を見る。
- 代表番号に電話し、「空き家の管理と活用について相談したい」と用件を伝えて取り次いでもらう。
売却・活用・解体・苦情対応で担当課が分かれることもあります(大崎町は企画調整課が総合窓口となり、住宅の構造は建設課、防犯は総務課、衛生は環境政策課と連携すると公表しています)。用件を先に伝えれば、適切な課に回してもらえます。
当サイトの市区町村ページからも、お住まいの地域の情報を探せます。
窓口で聞くとよいこと
漠然と「空き家をどうしたらいいか」と尋ねるより、項目を挙げて聞くほうが具体的な答えが返ってきます。
- 空き家バンク(または同等の制度)はあるか。登録の要件と必要書類は何か。
- 空き家に使える補助制度はあるか。解体(除却)、改修、家財の処分、取得・移住のどれが対象か。申請は着工前か。今年度の受付期間と予算の状況はどうか。
- 空き家の管理事業者を登録・紹介する制度はあるか。
- 空家等管理活用支援法人を指定しているか。無料の相談会や専門家派遣はあるか。
- 現況で固定資産税の扱いに影響が出る要素(管理不全空家等・特定空家等の指導の対象になっていないか)はあるか。
事業者を登録・紹介している自治体もある
管理や活用を任せる相手を探すときに、自治体の制度が手がかりになることがあります。長野市は「空き家管理事業者登録・紹介制度」として、市に登録した事業者の名簿を公開しています(令和8年8月17日現在で54件)。ページには、トラブルを防ぐために複数の事業者に管理内容を確認するよう勧めたうえで、**「管理事業者との協議や決定については、市は一切これに関与いたしません」**と明記されています。群馬県では、県の住宅供給公社のサイトで県内を7エリアに分けた空き家管理事業者の情報が提供されており、前橋市・渋川市なども対象地域として扱われています。
いずれの制度も、自治体が事業者の品質を保証したり、特定の事業者を勧めたりするものではありません。名簿は「連絡先が分かる候補の一覧」であり、業務範囲・料金・報告の形式を複数社で比べる作業は、結局のところ所有者の側で行うことになります。当サイトの2026年9月の調査では、こうした管理事業者の登録・名簿公開まで行っている自治体は、調べられた範囲で1〜2割程度にとどまりました。名簿が無い地域のほうが多い、というのが前提です。
「空家等管理活用支援法人」と、相談前に用意しておく情報
2023年(令和5年)12月13日に施行された改正空家法(令和5年法律第50号)では、「管理不全空家等」の新設とあわせて、空家等管理活用支援法人の制度が設けられました。市町村長が、NPO法人や一般社団法人・一般財団法人などを、申請に基づいて支援法人として指定できる仕組みです。指定された法人は、所有者からの相談に応じて情報提供や助言を行ったり、委託を受けて管理や活用に関わったりします。行政だけでは手が回らない相談対応を、地域の法人と分担するための制度です。
注意したいのは、これは「管理事業者の名簿」とは別の制度だという点です。当サイトの調査で確認した自治体では、指定法人の業務は相談対応・情報提供・活用提案が中心で、定期確認などの管理業務を掲げる法人が含まれる例はあるものの、巡回・除草といった管理業務の事業者を紹介するための名簿とは目的が異なります。相談先を探しているのか、作業を頼む相手を探しているのかで、たどる制度が変わります。
最後に、窓口に行く前に手元に揃えておくと話が早い情報を挙げます。
- 所在地(住居表示と、登記上の地番。両者は一致しないことがあります)
- 名義(登記事項証明書、または固定資産税の納税通知書。相続登記が済んでいるかどうか)
- 建物の概要(構造、延床面積、建築年。分からなければ「昭和50年代」といった年代でも手がかりになります)
- 現況(最後に人が住んだ時期、電気・水道が使えるか、残置物の有無、雨漏りや傾きの有無、直近で見に行った日)
- 相続人・共有者の状況(何人いるか、連絡が取れるか、方針が揃っているか)
- 自分の希望と制約(売りたいのか貸したいのか未定でよい。いつまでに、どこまで費用をかけられるか)
固定資産税の納税通知書は、地番・家屋番号・評価額が一度に分かるため、持参する資料としてとくに有用です。遠方に住んでいて現況が分からない場合は、その旨を伝えれば、まず現地を確認する方法から相談に乗ってもらえます。
ここに書いたのは制度の一般的な仕組みと、公開されている自治体制度の例です。バンクの登録要件、補助の可否、契約の進め方は、物件の状態と地域によって結論が変わります。個別の判断は、物件のある市区町村の窓口や、宅地建物取引士・司法書士・税理士などの専門家にご相談ください。
参考情報
- 国土交通省「全国版空き家・空き地バンク」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000131.html
- 国土交通省「空き家対策」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiya-taisaku/index.html
- e-Gov 法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」(平成26年法律第127号。令和5年法律第50号による改正を含む) https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127
- 横手市「空き家バンク」 https://www.city.yokote.lg.jp/kurashi/1001142/1001280/1001281/1002778.html
- 長野市「空き家管理事業者を紹介します」(空き家管理事業者登録・紹介制度) https://www.city.nagano.nagano.jp/n183500/contents/p003371.html
- 群馬県住宅供給公社「空き家管理事業者情報提供制度」 https://www.gunma-jkk.or.jp/akiya/vacant-house-manager/
- 市川市「空家活用マッチングサービス」 https://www.city.ichikawa.lg.jp/page/5027.html
- 浜松市「空き家バンク」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/simink/akiya/akiyabank.html
- 大崎町「空き家等バンク制度」 https://www.town.kagoshima-osaki.lg.jp/ke_kikaku/kurashi/ijuteju/sokushin/akiyabank.html
- 札幌市「空き家の適正管理」 https://www.city.sapporo.jp/toshi/k-shido/akiya-tekiseikannri.html
- 京都市「空き家対策」 https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000165540.html
※横手市・長野市・国土交通省のページは2026年9月21日、その他の自治体のページは2026年9月17日に確認した内容です。登録件数・成約実績・制度の要件は随時変わるため、手続きの前に必ず最新の公式ページをご確認ください。