実家を相続したら最初にやること|相続登記の義務化と「決めるまで傷ませない」段取り
公開: 2026年9月1日 最終更新: 2026年9月24日
親が住んでいた家を相続することになった。何から手を付ければよいのか分からない――そんな方に向けて、最初の数か月でやることを順に整理します。
- 2024年4月1日から相続登記の申請が義務になりました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内が期限です。
- 施行日より前に相続した不動産も対象で、この場合の期限は2027年3月31日までです。
- 売る・貸す・壊す・持ち続けるの結論を急ぐ必要はありませんが、その間も建物は傷みます。「決めるまで傷ませない」段取りを同時に考えます。
まず現状を確認する
最初にやるのは、書類と現物の確認です。慌てて業者を探す前に、手元の情報を揃えます。
固定資産税の納税通知書を探します。毎年春に市区町村から届くもので、所有している不動産の一覧と評価額が載っています。見当たらない場合は、物件のある市区町村の税務担当課で「名寄帳(固定資産課税台帳)」の写しを請求できます。相続人であることを示す戸籍等が必要です。
登記事項証明書を取得します。法務局の窓口やオンラインで請求でき、誰が所有者として登記されているか、抵当権が残っていないかを確認できます。親の代ではなく祖父母の名義のままになっていた、という例は珍しくありません。その場合は、さかのぼって手続きが必要になります。
現地の状態を見に行きます。遠方であっても、できれば一度は足を運びます。建物の傾きや屋根材のはがれ、雨漏りの跡、敷地内のごみや庭木の伸び具合、隣地への枝の越境。国土交通省が公開している「空き家管理チェックリスト」は、外観・屋内・敷地内の見るべき箇所が一覧になっているので、現地に持っていくと確認漏れが減ります。
近隣への挨拶も、この段階でしておくと後が楽になります。管理の状況を気にかけている方がいれば、異変があったときに連絡をもらえることがあります。
相続登記は2024年から義務になった
不動産登記法の改正により、2024年(令和6年)4月1日から相続登記の申請が義務化されました。法務省の説明によれば、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があり、正当な理由なくこれを怠った場合は10万円以下の過料の適用対象となります。
重要なのは、施行日より前に発生していた相続も対象になる点です。2024年4月1日より前に相続したことを知った不動産で相続登記がされていないものについては、2027年(令和9年)3月31日までに相続登記をする必要があるとされています。「何十年も前に亡くなった祖父の名義のままだった」という土地・建物も、ここに含まれます。
遺産分割の話し合いがまとまらず、3年以内に登記ができそうにない場合のために、相続人申告登記という簡易な手続きが用意されています。登記簿上の所有者について自分が相続人であることを、期限内に登記官へ申し出ることで、申請義務を履行したものとして扱われる仕組みです。ただしこれは義務を果たすための暫定的な手続きであり、所有権の移転そのものではありません。遺産分割がまとまった後には、あらためて相続登記が必要になります。
手続きの進め方や必要書類は、物件を管轄する法務局で相談できます。相続人が多い、相続人の中に連絡が取れない人がいる、といった事情があるなら、司法書士などの専門家に依頼する方が結果的に早いことが多いでしょう。
放置しないための「つなぎ」を決める
方針が決まるまでの間も、建物は使われないまま傷んでいきます。総務省の令和5年住宅・土地統計調査によれば、2023年10月1日現在の空き家は900万2千戸、総住宅数に占める割合(空き家率)は13.8%で、いずれも過去最多・過去最高となりました。このうち賃貸・売却用や別荘などの二次的住宅を除く空き家は385万6千戸で、2018年から36万9千戸増えています。多くは、まさに「これからどうするか決まっていない家」です。
つなぎの選択肢は、おおむね次の3つです。
- 自分で定期的に通う:片道1時間程度で通えるなら現実的です。通気・通水、郵便物の回収、敷地の清掃を月1回程度。
- 近くに住む親族に頼む:無償で継続的に頼むのは負担が大きいので、交通費や手間賃の扱いを最初に決めておきます。
- 空き家管理サービスに依頼する:遠方の場合の選択肢です。何をしてくれるのかは空き家管理サービスとは何をしてくれるのかで、費用の見方は空き家管理の費用の考え方でまとめています。
あわせて、電気・ガス・水道・電話の契約をどうするかを決めます。すべて止めてしまうと、通水ができない、夜間に照明が使えない、といった不便が出ます。防犯上、電気だけは残す方もいます。郵便物の転送届(日本郵便に提出する転居届)も早めに出しておくと、ポストがあふれるのを防げます。
火災保険の扱いも確認が必要です。人が住まなくなった建物は、これまでと同じ契約を続けられるとは限りません。詳しくは空き家と火災保険で扱っています。
費用と税金の見通しを立てる
持ち続ける間にかかるのは、主に次のものです。
- 固定資産税・都市計画税:毎年かかります。住宅が建っている土地には住宅用地特例があり、固定資産税の課税標準が200平方メートル以下の部分で6分の1、それを超える部分で3分の1に減額されます。ただし、市区町村長から勧告を受けた特定空家等・管理不全空家等の敷地は、この特例の対象から除外されます(特定空家等に指定されると固定資産税はどうなるか)。
- 火災保険料、電気・水道等の基本料金、管理を委託する場合の費用。
- 庭木の剪定や修繕といった臨時の出費。
将来、売却を考えるのであれば、税制上の特例も視野に入ります。国税庁の「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」は、一定の要件を満たす場合に譲渡所得から最高3,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除できるというものです。昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」を提出することなど、要件が細かく定められています。期限のある制度なので、売却を選択肢に入れるなら早い段階で税務署や税理士に確認しておくと判断がしやすくなります。
なお、建物のない土地だけを手放す方法として、相続土地国庫帰属制度(2023年4月27日開始)があります。相続または遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を国庫に帰属させることを申請できる制度です。対象は土地で、建物が建っている土地は申請できません。
最初の3か月でやることの整理
| 時期の目安 | やること |
|---|---|
| すぐ | 固定資産税の納税通知書・登記事項証明書の確認、現地の確認、近隣への挨拶 |
| 1〜2か月 | 相続人の確定(戸籍の収集)、遺産分割の話し合い、ライフラインと保険の確認 |
| 3か月〜 | 相続登記の申請(期限は3年以内)、管理方法の決定、売却・賃貸・解体の検討 |
相続放棄を考える場合は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内という期限があります。借入金などの負債が想定されるときは、この期間内に家庭裁判所や専門家へ相談してください。
相続の事情は一軒ごと、一家族ごとに異なります。ここに書いたのは一般的な流れであり、個別の判断については、司法書士・税理士・弁護士などの専門家や、物件のある市区町村の相談窓口にご相談ください。
参考情報
- 法務省「相続登記の申請義務化についてのよくある質問」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html
- 法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html
- 法務省「相続土地国庫帰属制度について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html
- 総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」 https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/kihon_gaiyou.pdf
- 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- 国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/002019834.pdf
- 国土交通省「空き家管理チェックリスト」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/002019879.pdf