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空き家を放置すると起きること|建物の傷み・近隣トラブル・管理不全空家等と特定空家等

公開: 2026年9月1日 最終更新: 2026年9月24日

「結論が出るまで、しばらくはこのままで」と決めた実家が、数年後に思っていたより傷んでいた――空き家の相談では珍しくない話です。放置するとどうなるのかを、建物・近隣・制度の三方向から整理します。

  • 人が住まなくなった家は、換気と通水が止まることで内側から傷みます。外からは見えにくく、気づいたときには手当ての費用が膨らんでいます。
  • 2023年(令和5年)12月13日施行の改正空家法で「管理不全空家等」が新設され、特定空家等になる前の段階でも市区町村長が指導・勧告を行えるようになりました。
  • 勧告を受けると、その敷地は固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外されます。特定空家等・管理不全空家等のどちらも同じ扱いです。

人が住まなくなると家はどう傷むか

住んでいる家が長持ちするのは、毎日の生活そのものが点検と手入れを兼ねているからです。窓を開ける、水を流す、雨漏りの染みに気づく。この積み重ねが止まると、傷みの進み方が変わります。

湿気がこもるのが最初の変化です。換気されない室内では湿気が抜けず、押し入れや北側の部屋からカビが出ます。畳や建具が反り、壁紙がはがれます。木部の含水率が高い状態が続けば、シロアリ(蟻害)や腐朽菌にとって居心地のよい環境になります。国土交通省のガイドラインが管理不全空家の例として挙げる「構造部材の破損、腐朽、蟻害、腐食等」は、こうして進みます。

排水管の封水が切れるのも、人が住まない家に特有の現象です。洗面台や排水口のトラップにたまった水は、使わなければ蒸発します。封水がなくなると下水の臭気がそのまま室内へ上がり、排水管を伝って害虫が入ってくることもあります。同じガイドラインは、周辺の生活環境への影響の例として「排水設備の破損等又は封水切れ」を挙げています。月に一度、各所の水を少し流すだけで防げるものです。

小さな破損が放置されることも効いてきます。屋根ふき材の破損、雨樋の詰まり、外壁のひび。住んでいれば「雨の日に音がする」「天井に染みができた」と気づいて直すところが、誰も見ていなければそのまま雨水の通り道になります。雨漏りは天井裏から下へ広がるため、室内に現れたときには下地がかなり傷んでいることが多く、部分補修で済むはずだった工事が大掛かりになります。

敷地も同時に変化します。庭木は数年で手に負えない大きさになり、落ち葉が雨樋を詰まらせ、枝が隣地や道路へ伸びます。伸びた草は虫やねずみ、動物のすみかになります。

近隣に及ぶ影響は見た目だけではない

空き家をめぐる近隣トラブルは、「景観が悪い」という話にとどまりません。国土交通省のガイドラインは、放置した場合の悪影響を「保安上危険」「衛生上有害」「景観悪化」「周辺の生活環境の保全への影響」の4つの観点に整理しており、それぞれに具体的な状態の例が示されています。

  • 保安上の危険:外壁材や屋根ふき材、手すり、看板、雨樋などの剥落・脱落。門や塀、屋外階段の傾き。立木の大枝の落下や飛散。台風や地震のたびに、隣家の車や通行人に及ぶリスクが意識されます。
  • 衛生上の有害:排水設備の破損による汚水の流出、清掃されないことによる常態的な水たまりや腐敗したごみ、蚊やねずみの発生、動物の糞尿。古い建物では、吹付け石綿の露出や石綿使用部材の破損も挙げられています。
  • 景観の悪化:屋根ふき材・外装材・看板等の著しい色褪せ、破損、汚損。
  • 周辺の生活環境:汚水等による悪臭、不特定の者が容易に侵入できるほどの開口部等の破損、落雪による通行障害、立木の枝のはみ出しによる通行障害、動物のすみつきと鳴き声。

実務上いちばん多いのは、庭木や雑草の越境とごみ・臭いです。どちらも「言いにくいが困っている」種類の問題で、直接言われないまま不満だけがたまります。関係がこじれてから連絡を取るのは、遠方に住んでいるとなおさら難しくなります。

また、開口部の破損は不法侵入の入口になります。割れたガラスや外れた雨戸をそのままにしていると、立ち入りや不法投棄、失火といった事態につながります。空き家で起きた火災や事故の責任の所在は個別の事情によりますが、所有者として建物の管理が問われる場面があることは押さえておきたいところです。

近隣への影響は、市区町村への相談という形で表に出ます。自治体の空き家担当課に寄せられた情報が、次に述べる法律上の手続の出発点になることも少なくありません。

2023年の改正で「管理不全空家等」が加わった

空き家の管理については、空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号。以下「空家法」)が市区町村の対応を定めています。もともとあったのが特定空家等で、空家法第2条第2項により、次のいずれかの状態にあると認められる空家等と定義されています。

  1. そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  2. そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  3. 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  4. その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

ここに、令和5年法律第50号による改正(2023年12月13日施行)で加わったのが管理不全空家等です。空家法第13条第1項で、「適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認められる空家等」と定義されています。つまり、特定空家等になってしまう手前の段階を新たに名前を付けて対象にした、というのが改正の趣旨です。

両者の違いは、国土交通省の参考基準を並べて見るとわかりやすくなります。たとえば屋根ふき材について、特定空家等の例が「飛散のおそれがあるほどの著しい屋根ふき材の破損等」であるのに対し、管理不全空家等の例は「屋根ふき材の破損等」です。立木であれば、特定空家等は「倒壊のおそれがあるほどの著しい立木の傾斜」、管理不全空家等は「立木の伐採、補強等がなされておらず、腐朽が認められる状態」とされています。程度の差であり、放っておけば前者へ進むという関係にあります。

手続も段階的です。管理不全空家等については、市町村長がまず空家法第13条第1項に基づく指導を行い、それでも改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認めるときに、同条第2項に基づく勧告を行うことができます。指導を経ていなければ勧告はできません。なお管理不全空家等には、命令や代執行といった強い措置は規定されていません。

特定空家等になると、空家法第22条に基づき助言又は指導 → 勧告 → 命令 → 行政代執行という順で措置が進みます。国土交通省の資料によれば、2015年(平成27年)5月から2023年(令和5年)3月までの累計で、勧告3,078件(417市区町村)、命令382件(180市区町村)、行政代執行180件(129市区町村)の実績があります。いきなり取り壊されるわけではなく、何段階もの働きかけを経て進む仕組みです。

なお、相続や売買で所有者が変わった場合、従前の所有者へ助言・指導や勧告が行われていたときでも、新たな所有者に対して改めて助言又は指導から手続をやり直す必要があるとされています。前の所有者への通知を自分が引き継ぐわけではないという点は、相続した方にとって知っておく価値があります。

勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が外れる

放置の影響で、金銭面としていちばん直接的なのが固定資産税です。

住宅が建っている土地には住宅用地特例があり、地方税法第349条の3の2などに基づいて、固定資産税の課税標準が200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)で6分の1、200平方メートルを超える部分(一般住宅用地)で3分の1に減額されます。空き家であっても家屋が建っている限り、通常はこの特例が適用されています。

ところが、市町村長から勧告を受けた特定空家等の敷地、そして改正後は勧告を受けた管理不全空家等の敷地についても、住宅用地特例の適用対象から除外されます。居住の用に供する住宅用地の税負担を軽くするという特例本来の趣旨から外れる、という考え方によるものです。

押さえておきたいのは次の3点です。

  • 区切りは勧告です。指導の段階では特例は外れません。特定空家等・管理不全空家等に「認定された」時点ではなく、勧告が行われたときに除外されます。
  • 国土交通省のガイドラインは、管理不全空家等として勧告を受けた後にその状態が悪化して特定空家等に該当することとなった場合でも、当該勧告が撤回されない限り、住宅用地特例の対象から除外された状態が継続する、としています。
  • 総務省の通知では、構造上住宅と認められない状況にある場合、使用の見込みはなく取壊しを予定している場合などは、そもそも特例の対象となる「住宅」に該当しないとされています。勧告の有無にかかわらず、家屋の状態によっては特例の対象外になり得ます。

実際にいくら変わるかは、土地の評価額や面積、市区町村の税率によって異なります。仕組みと具体的な計算の見方は特定空家等に指定されると固定資産税はどうなるかで詳しく扱っています。

放置を止めるために今からできること

売る・貸す・壊す・持ち続けるの結論が出るまでには時間がかかります。結論を急ぐ必要はありませんが、その間も傷みは進むというのがここまでの話でした。逆に言えば、進み方を遅くする手当ては、どれもそれほど大掛かりではありません。

  • 月1回程度の換気と通水:窓を開けて空気を入れ替え、各所の蛇口から水を少し流します。封水切れとカビの大半はこれで防げます。
  • 郵便物の回収:あふれたポストは、管理されていないことの一番わかりやすい合図になります。日本郵便の転居届で自宅へ転送しておく方法もあります。
  • 敷地の見回り:庭木の伸び具合、越境した枝、雨樋の詰まり、不法投棄の有無。年に1〜2回の剪定を計画に入れておきます。
  • 外観の点検:屋根ふき材の破損、外壁のひび、雨戸やガラスの破損、雨漏りの跡。国土交通省が公開している「空き家管理チェックリスト」は、外観・屋内・敷地内の見るべき箇所が一覧になっており、現地に持っていくと確認漏れが減ります。
  • 近隣への挨拶と連絡先の共有:異変があったときに連絡をもらえる関係があるだけで、対応の速さが変わります。

片道1時間程度で通えるなら、自分で回るのが確実です。遠方の場合は、親族に頼むか、空き家管理サービスを使うかの検討になります。委託した場合に実際どこまでやってもらえるのかは空き家管理サービスとは何をしてくれるのかにまとめました。相続の直後で何から手を付けるか決めかねているなら、実家を相続したら最初にやることから順に確認するのが早道です。

数の面でも、空き家は特別な状況ではなくなっています。総務省の令和5年住宅・土地統計調査によれば、2023年10月1日現在の空き家は900万2千戸、総住宅数に占める割合は13.8%で、いずれも過去最多・過去最高となりました。このうち賃貸・売却用や別荘などの二次的住宅を除く空き家は385万6千戸です。同じ状況の家がこれだけあるということは、自治体側にも相談の蓄積があるということでもあります。

住んでいた人の思い出がある家ほど、決断は簡単ではありません。ただ、傷みが進むほど選べる道は狭まります。修繕して貸す、そのまま売るといった選択肢は、建物が一定の状態を保っているうちの方が取りやすいものです。

空き家の状態や近隣への影響、行政の判断は一軒ごとに異なります。ここに書いたのは制度の一般的な仕組みであり、個別の判断については、物件のある市区町村の空き家相談窓口や、司法書士・税理士・建築士などの専門家にご相談ください。

参考情報

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