特定空家等に指定されると固定資産税はどうなるか|住宅用地特例が外れる仕組み
公開: 2026年9月1日 最終更新: 2026年9月24日
空き家を放置していると「固定資産税が跳ね上がる」という話を聞いたことがある方は多いと思います。何が、どの時点で、どう変わるのか。制度の条文に沿って整理します。
- 住宅が建っている土地は「住宅用地特例」で固定資産税の課税標準が下がりますが、市区町村長から勧告を受けた特定空家等・管理不全空家等の敷地は、この特例の対象から外れます。
- 外れるのは「課税標準の特例」です。税額がそのまま6倍になるという意味ではありません。評価額や都市計画税、負担調整の仕組みによって変わり方は異なります。
- 特例が外れるのは勧告を受けた段階で、その前には助言・指導(管理不全空家等では指導)があります。連絡を無視しないことが一番の対策です。
住宅用地特例とは何か
固定資産税は、土地や家屋の「価格(評価額)」をもとに算出した課税標準額に税率をかけて計算します。このうち、人が住む家屋の敷地になっている土地については課税標準を引き下げる措置があり、これを住宅用地特例と呼びます。国土交通省の資料では「住宅政策上の見地から、居住の用に供する住宅用地について税負担の軽減を図るために設けられた措置」と説明されています。
根拠は地方税法第349条の3の2です。住宅用地に課する固定資産税の課税標準をその土地の価格の3分の1とし(第1項)、さらにそのうち200平方メートル以下の部分(住居が複数ある場合は住居の数×200平方メートルまで)を「小規模住宅用地」として価格の6分の1とする(第2項)、という構成です。
| 区分 | 面積 | 固定資産税の課税標準 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地 | 200平方メートル以下の部分 | 価格の6分の1 |
| 一般住宅用地 | 200平方メートルを超える部分 | 価格の3分の1 |
都市計画税にも同様の特例があります。地方税法第702条の3により、住宅用地の都市計画税の課税標準は、小規模住宅用地の部分が価格の3分の1、それ以外の部分が価格の3分の2とされています。固定資産税とは割合が違う点に注意してください。
押さえておきたいのは、この特例が土地に対するもので、家屋があることが前提だという点です。建物を解体して更地にすれば家屋分の固定資産税はなくなりますが、土地についてはこの特例の適用がなくなります。また、建物が残っていれば必ず使えるわけでもありません。国土交通省の資料が引用する総務省の通知(平成27年総務省固定資産税課長通知)では、構造上住宅と認められない状況にある場合や、使用の見込みはなく取壊しを予定している場合などは、特例の対象となる「住宅」に該当しないとされています。
特例が外れるのは「勧告」の段階
空き家をめぐる行政の手続は、空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)に定められています。2023年(令和5年)12月13日に改正法が施行され、従来の「特定空家等」に加えて「管理不全空家等」という区分が設けられました。
特定空家等とは、空家法第2条第2項で「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等」と定義されています。
管理不全空家等は、第13条第1項で「適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認められる空家等」とされています。特定空家等の一歩手前、という位置づけです。
手続の流れは次のとおりです。
- 特定空家等(第22条):助言又は指導 → 勧告 → 命令 → 行政代執行
- 管理不全空家等(第13条):指導 → 勧告
住宅用地特例の対象から外れるのは、この勧告を受けた段階です。地方税法第349条の3の2第1項は「住宅用地」の定義そのものから、空家法第13条第2項により勧告がされた管理不全空家等の敷地と、同法第22条第2項により勧告がされた特定空家等の敷地を除外しています。命令や代執行まで進まなくても、勧告の時点で税の扱いが変わる設計です。
言い換えれば、助言・指導の段階であれば特例は維持されます。市区町村からの連絡は、いきなり勧告から始まるわけではありません。国土交通省の集計では、平成27年5月から令和5年3月までの累計で、特定空家等に対する勧告3,078件(417市区町村)、命令382件、行政代執行180件となっています。
「税額が6倍になる」と言い切れない理由
「特定空家等に指定されると固定資産税が6倍になる」という説明をよく見かけますが、これは正確ではありません。理由は3つあります。
1つめ。外れるのは「課税標準の特例」であって、税額そのものではありません。 住宅用地特例は、税額計算のもとになる課税標準額を価格の6分の1(または3分の1)に抑える仕組みです。特例が外れると計算の出発点が変わりますが、そこから先が単純な掛け算になるとは限りません。
2つめ。特例から外れた土地には、別の課税標準の調整が働きます。 住宅用地以外の土地には、課税標準額に上限を設ける措置や、前年度の課税標準額からの上がり方を緩やかにする負担調整措置が地方税法の附則で定められています。このため、特例が外れた翌年度にいきなり6倍の税額になるのではなく、複数年度をかけて段階的に上がる形になることがあります。
3つめ。都市計画税の扱いが固定資産税と異なります。 都市計画税の特例は3分の1・3分の2で、固定資産税の6分の1・3分の1とは割合が違います。都市計画税が課される区域かどうかも場所によって異なります。
正確に言えば、「勧告を受けるとその土地は住宅用地特例の対象から外れ、課税標準の計算の前提が変わる。結果として負担は増えるが、増え方は土地の評価額・面積・前年度までの課税状況によって異なる」ということになります。
いつの年度の税金から変わるのか
固定資産税は、その年の1月1日時点の状況をもとに、1年分をまとめて課税する税金です。地方税法第359条は「固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする」と定めています。
この仕組みがあるため、特例が外れる影響が税額に表れるのは、勧告を受けた時点ではなく、その後に到来する賦課期日(1月1日)を基準とする年度の課税からです。ある年の秋に勧告を受けた場合、その年度の固定資産税は既に確定しているため変わらず、翌年1月1日を賦課期日とする年度の課税から扱いが変わります。
逆に言えば、勧告を受けてから次の1月1日までの間に状態を改善し、勧告が撤回されれば、特例の対象から外れずに済む可能性があります。空家法第22条第2項は、助言・指導をしてもなお状態が改善されないと認めるときに「相当の猶予期限を付けて」勧告することができると定めています。この猶予期限は、改善のために与えられた時間でもあります。
ただし、勧告の撤回の判断や、どの時点の状態で課税上の判定をするかは市区町村の事務の運用によります。通知を受け取ったら、書面に記載された担当課へ早めに連絡し、いつまでに何をすれば改善と認められるのかを確認してください。放置して期限が過ぎると特定空家等では命令(第22条第3項)に進み、命令に違反した者は50万円以下の過料に処するとされています(第30条)。
勧告を受けないために、相続人ができること
特例を外されるかどうかは、行政からの連絡に気づけるか、状態を改善できるかにかかっています。相続した空き家について確認したいのは次の点です。
登記と納税通知書の宛先が自分になっているか。 名義が亡くなった親や祖父母のままだと市区町村からの通知が届かず、指導の段階で気づけません。相続登記は2024年4月から義務化されています。手順は実家を相続したら最初にやることで整理しています。
敷地と建物が「放置されている」と見える状態になっていないか。 実務上は、屋根材や外壁の破損、庭木や雑草の繁茂、ごみの堆積、郵便物のあふれといった外から分かる状態が入口になります。詳しくは空き家を放置すると起きることで扱っています。
定期的に見に行く手段を確保しているか。 遠方で通えない場合は、親族に頼むか空き家管理サービスを使うかの選択になります。月1回程度の巡回と外観点検があれば、指導を受けるような状態になる前に手を打てます。
自治体の制度を調べているか。 除却や改修への補助、空き家バンクなど、市区町村ごとに制度が用意されていることがあります。特定空家等に関する運用や相談窓口も自治体によって違うので、お住まいの市区町村のページで制度情報と窓口を確認してください。
実際の課税額の計算や、勧告を受けた場合・解体した場合の税額の見込みといった個別の判断については、所轄の税務署、物件のある市区町村の税務担当課、または税理士にご相談ください。
参考情報
- 国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/002019834.pdf
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法について」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
- 国土交通省「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/002019841.pdf
- 国土交通省「空き家対策総合サイト」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiya-taisaku/index.html
- e-Gov法令検索「地方税法」(第349条の3の2・第359条・第702条の3) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」(第2条・第13条・第22条・第30条) https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127