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空き家と火災保険|住まなくなった家で契約の扱いが変わる理由と、告知・通知義務

公開: 2026年9月1日 最終更新: 2026年9月24日

相続した実家に誰も住まなくなったとき、見落とされやすいのが火災保険です。親が掛けていた契約がそのまま続くとは限らず、放っておくと「火事になってから補償がないと分かった」ということが起こり得ます。

  • 火災保険の料率は建物の使われ方で区分されており、住居としてのみ使う建物は「住宅物件」、それ以外は「一般物件」などに分かれます。人が住まなくなった家は、住宅物件として扱われない場合があります。
  • 保険法は契約時の告知義務を定めており、契約後に危険の状態が変わったときの通知については約款で定められるのが一般的です。空き家になったことは、保険会社へ伝えるべき事柄にあたり得ます。
  • 既存の契約を続けられるか、どの引受条件になるかは保険会社の判断です。ここでは一般的な考え方だけを整理します。

人が住まなくなると、火災保険の「扱い」が変わり得る

火災保険の保険料のもとになる参考純率は、損害保険料率算出機構が算出しています。同機構の説明によれば、火災保険の物件は用途によって区分され、住宅物件は「住居としてのみ使用する建物」、一般物件は「オフィスビルや学校など、住宅物件・工場物件・倉庫物件のいずれにも該当しないもの」とされています。ほかに工場物件・倉庫物件があります。

ここで大事なのは、区分の基準が「建物の見た目」ではなく「使われ方」だという点です。木造の一戸建てであっても、住居として使われていなければ住宅物件の定義に当てはまらない、という整理があり得ます。人が住まなくなった実家が住宅物件として扱われない場合があるのは、このためです。

一般物件として扱われることになると、保険料の水準だけでなく、付けられる補償の範囲や契約の条件も変わってきます。「同じ建物なのに、住んでいたときと同じ契約ではなくなる」のは、この区分の違いから生じます。

ただし、住まなくなった家がただちに一般物件になると決まっているわけではありません。家財が置かれたままで定期的に出入りがある、別荘として使っている、近く売却の予定がある――こうした事情をどう評価するかは保険会社ごとの引受基準によります。「空き家だから入れない」と一律に言えるものではなく、「今までどおりで大丈夫」と自己判断してよいものでもありません。

告知義務と、契約後の「変わったこと」を伝える義務

保険契約には、契約するときの義務と、契約した後の義務があります。

契約するときの義務が告知義務です。保険法第4条は、損害保険契約を結ぶ際、保険者が告知を求めた事項(告知事項)について、事実を告げなければならないと定めています。建物の構造や用途は、通常この告知事項に含まれます。告知事項について故意または重大な過失で事実を告げなかったり、事実と異なることを告げたりした場合、保険者は契約を解除できる旨が同法第5条に定められています。解除されると、原則としてその原因に関係する保険金は支払われません。

契約した後の義務が、一般に通知義務と呼ばれるものです。保険法第29条は、告知事項についての危険が高くなり、その状態が続いた場合(危険増加)に、遅滞なく通知すべき旨が契約で定められているときの取り扱いを規定しています。この通知を怠ったときは、保険者が契約を解除できる場合があります。火災保険の約款では、建物の用途の変更や長期不在などを通知の対象としていることが多く、空き家になったことは「伝えるべき変化」にあたり得ます。

実務上つまずきやすいのは、相続で所有者が変わったのに契約者が親の名義のままになっているケースです。名義の変更と居住実態の変化は、思い出した時点でまとめて保険会社か代理店に連絡するのが結局いちばん早い方法です。黙っていて得をする場面はありません。

なお、既存の契約を継続できるかどうか、継続できるとしてどのような条件になるかは、保険会社の引受判断です。本記事では「こうすれば入れる」といった書き方はしません。相続後の最初の段取り全体については実家を相続したら最初にやることも参考にしてください。

「空き家向けの保険」という選択肢の考え方

通常の火災保険をそのまま継続することが難しい場合に、別の枠組みで補償を確保するという選択肢があります。空き家や別荘、長期不在の建物を想定した引受を行う保険会社・共済・代理店は存在し、一般物件として引き受ける形、専用の商品として用意されている形など、取り扱いはさまざまです。

本記事では特定の商品を挙げたり勧めたりはしません。代わりに、検討するときに見るべき「軸」を挙げておきます。

  • 何が補償されるのか:火災・落雷・破裂爆発だけなのか、風災・雪災、水濡れ、盗難、建物の破損・汚損まで含むのか。空き家では盗難や第三者による破損のリスクが相対的に上がります。
  • 建物と家財のどちらが対象か:家財を残している場合、建物だけの契約では家財の損害は対象になりません。
  • 賠償責任の補償があるか:屋根瓦や外壁の落下で他人にけがをさせた、といった損害は火災保険の本体ではなく、個人賠償責任や施設賠償責任といった補償で扱われるのが一般的です。空き家ではここが実務上の要になります。
  • 管理に関する条件が付いていないか:定期的な巡回や施錠、通電の有無を引受の前提としている場合があります。
  • 契約期間と更新の扱い:短期で区切られている場合、更新のたびに条件が見直されることがあります。

売却まで半年の家と当面持ち続ける家では、掛けるべき期間も補償の厚みも違います。判断の材料として、まず家の現況と傷み具合を把握しておくことが役に立ちます(空き家を放置すると起きること)。

失火責任法と、近隣への賠償をどう考えるか

「自分の家が燃えるだけなら自分の損」と考えてしまいがちですが、空き家の火災で重いのは、隣家へ燃え移ったときの責任です。ここには日本特有の法律が関わります。

**失火ノ責任ニ関スル法律(失火責任法)**は、明治32年に制定された一条だけの法律で、「民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」と定めています。つまり、失火で隣家を焼いてしまっても、重大な過失がなければ民法709条の不法行為責任は負わないという枠組みです。

この法律があるために、隣家からのもらい火で自宅が焼けても賠償を受けられないことがあり、だからこそ各自が自分の建物に火災保険を掛ける必要がある、という説明がなされます。

ただし、空き家の所有者にとってこれは安心材料ではありません。理由は二つあります。

一つは、「重大な過失」があったと評価されれば責任を免れないことです。何が重過失にあたるかは個別の事案ごとの判断ですが、危険な状態を認識しながら長期間放置していた、といった事情は不利に働き得ます。

もう一つは、失火責任法が対象にするのは「失火」であって、建物そのものの欠陥による損害は別枠だということです。民法第717条は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときの責任(工作物責任)を定めており、原則として占有者、占有者が必要な注意をしたときは所有者が責任を負います。所有者の責任は、注意を尽くしたことを理由に免れられない構成です。屋根材や外壁の落下、倒木、ブロック塀の倒壊といった空き家で起きやすい事故は、こちらの領域にあたります。

要するに、放置して傷ませること自体が、保険の引受条件にも、万一のときの責任の重さにも効いてくるということです。管理の実務を外部に委ねる選択肢については空き家管理サービスとは何をしてくれるのかにまとめています。

地震保険は別建て。管理状態とあわせて考える

地震への備えは、火災保険とは別に考える必要があります。財務省の説明によれば、火災保険では、地震を原因とする火災による損害や、地震により延焼・拡大した損害は補償されません。地震・噴火・またはこれらによる津波を原因とする損害に備えるのが地震保険です。

地震保険には、制度上の枠が決まっています。

  • 対象は**居住の用に供する建物および家財(生活用動産)**で、工場や事務所専用の建物、30万円を超える貴金属・宝石などは対象外とされています。
  • 火災保険に付帯する方式での契約となるため、火災保険への加入が前提になります。単独では契約できません。
  • 保険金額は火災保険の保険金額の30%〜50%の範囲内で設定でき、建物は5,000万円、家財は1,000万円が限度とされています。

空き家との関係で押さえておきたいのは、対象が「居住の用に供する建物」だという点です。火災保険の側で住宅物件として扱われなくなった建物について、地震保険を同じように付けられるとは限りません。ここも個別の判断になります。

そして、どの補償を選ぶにしても土台になるのが管理の状態です。定期的に見回っている家と何年も戸を閉めたままの家とでは、引受の条件も、いざというときの原因の説明のしやすさも変わります。巡回の報告書や写真を残しておくことには、こうした副次的な意味もあります。

保険会社と話がつかないときの相談先として、日本損害保険協会が指定紛争解決機関として運営する「そんぽADRセンター」があります。空き家をめぐる勧誘や工事契約のトラブルは、消費者ホットライン「188」や地域の消費生活センターが窓口です。

保険の引受条件や約款の内容は保険会社ごとに異なり、同じ「空き家」でも建物の状態・使い方・地域によって結論が変わります。ここに書いたのは制度の一般的な仕組みです。ご自身の契約をどうするかは、契約中の保険会社・代理店、または保険相談窓口にご相談ください。

参考情報

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